糖尿病の合併症
糖尿病の合併症
糖尿病になり血糖値が高い状態が続くと、全身の血管が傷つき、また血液がドロドロになり様々な負担が血管に加えられます。とくに細い血管(毛細血管)は詰まりやすいため影響を受けやすく、毛細血管が集中する網膜、腎臓、神経に障害が現れてきます。これが三大合併症(細小血管障害)といわれる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」です。また、高血糖の状態は毛細血管だけではなく、動脈硬化を進展させることで太い血管にも影響を与え、大血管障害と呼ばれる脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる重大な病気を引き起こします。これらの合併症は糖尿病と診断されたときから進行し、5~10年くらいで出現すると考えられています。高血糖の状態を放置しておくと、失明、透析、足の壊疽(えそ)などを引き起こす可能性もありますので、きちんと治療を受け、合併症を予防していくことが重要です。
初期から自覚症状なく進行します。眼の網膜の毛細血管が傷つき視力低下や出血を起こし、進行すると最後は失明に至ります。網膜症を発症するまでの期間は1〜20年以上と幅広く、平均すると15年で約40%の人に発症します。糖尿病の罹病期間が長くなればなるほど、網膜症を発症しやすくなります。糖尿病網膜症は2017年からは日本人の中途失明原因の第3位で年間約3,000人が失明しています。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても定期的に「眼底検査」を受け、良好な血糖コントロールを継続的に行っていくことが大切です。
糖尿病の罹患後10〜15年以上経過してから発症することが多いとされています。腎臓には糸球体という毛細血管のかたまりがあり、血液をろ過しています。高血糖の状態になると、この糸球体が傷つきやすくなり、放置することで徐々に腎臓が傷つけられ、尿と一緒にたんぱく質も出てきます(近年たんぱく尿を伴わず動脈硬化が進行して腎機能が悪化する腎硬化症タイプの糖尿病性腎症も認められてきています)。腎症が進行すると最終的には慢性腎不全となり、血液透析が必要な状態となります。1998年以降、糖尿病性腎症は慢性糸球体腎炎にかわり血液透析導入の原因疾患の1位となり、2018年には約1万6千人が糖尿病性腎症による慢性腎不全で血液透析導入となっています。継続的な血糖コントロールと定期的な尿検査を行っていくことが大切です。
糖尿病は神経にもダメージを与えます。糖尿病発症から5年くらいと網膜症、腎症と違い比較的初期から症状が現れます。初期には手足がしびれたり、悪化すると痛みの感覚が鈍くなったりします(けがや火傷の痛みに気づかないなど)。とくに足は症状が悪化すると壊疽に至りやすく、場合によっては足の切断を余儀なくされる場合もあります。糖尿病の足壊疽(あしえそ)による大切断(足首より上側での切断)は、非外傷性の切断原因の第1位で、年間3千人の方が大切な足を失っています。自覚症状があるので、早めに医師に相談しましょう。
脳梗塞、心筋梗塞、皮膚病、感染症、閉塞性動脈硬化症、歯周病なども合併症として挙げられます。