糖尿病の運動療法について
糖尿病の運動療法について
運動療法は、食事療法と並んで糖尿病治療の大きな柱となります。
運動は血糖値を下げるだけでなく、血圧や脂質の改善、心肺機能の向上、肥満の解消や動脈硬化の予防などにも効果があります。
運動をすると、運動中やその後に、糖や脂肪酸の利用が促進され、血糖値が低下します。
肥満症は内臓の脂肪が増えることで、インスリンの効きが悪くなり、糖尿病を悪化させる要因となりますが、運動を長期間続けることで、インスリンの効きが良くなり、血糖値が低下しやすい状態を維持できるようになります。
また、運動を続けることで基礎体力や代謝を上げ、加齢による筋力の低下や骨粗鬆症にも効果的です。
運動によって汗を流し適切な疲労を感じることはストレス解消や睡眠の質の向上にも効果が期待できます。
運動の種類は有酸素運動、レジスタンス運動、バランス運動に分類されます。
有酸素運動とは、酸素を使いエネルギーを消費する運動のことを指します。
ジョギングや水泳、サイクリングといった、中程度の負荷をかけながら持続的に行う運動が代表的です。
糖尿病の管理において、有酸素運動は血糖値のコントロールや全身の健康を促進する上で重要となります。
継続して行うことでインスリンの効きを良くする効果があります。
「中強度」で週に3回以上、週の合計が150分以上が目標です。運動をしない日が2日間以上続かないように行いましょう。
中強度とは、主観的に「楽である〜ややきつい」程度の運動です。心拍数を測れる場合は、「50歳未満では1分間に100〜120拍、50歳以上は1分間に100拍未満」を指標にすることができます。
体重60kgの場合、100kcalの消費の目安は下記の通りです。
運動時間を設けることが難しい場合は、1日8000歩以上を目標に行いましょう。30分ごとに3分程度の軽い運動であっても、食後の高血糖を改善させる効果がわかっています。
日常生活によるエネルギー消費を目指すこと(いつもより1駅多く歩く、いつもより遠いスーパーに行ってみる、入念に掃除や片付けをする、子供と一緒に公園で遊ぶ、エスカレーターをやめて階段を使う…など)も有効です。
レジスタンス運動とは、筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動のことを指します。まずは強度の少ないメニューから始めていき、少しずつ負荷をかけていくようにしましょう。
レジスタンス運動によって筋力・筋肉量を増やすことができます。
有酸素運動とレジスタンス運動はともに血糖値の改善に有効であることがわかっており、併用することでより効果があります。
上半身や下半身の筋肉を含んだ8〜10種類のレジスタンス運動を行いましょう。
10〜15回程度繰り返すことのできる負荷を1セット行うことから開始し、徐々に負荷を増加させながら、1日1〜3セット行いましょう。
連続しない日程で週に2〜3日行うことが目標です。
効果: 大腿四頭筋、ハムストリングス、臀部の強化
具体的な方法:
効果: 胸筋、三角筋、三頭筋の強化
具体的な方法:
効果: 腿の筋肉、臀部、腹筋の強化
具体的な方法:
片足立位保持や、ステップ練習、体幹バランス運動などが含まれます。ご高齢の方では特に、バランス運動を行うことで、生活機能の維持や向上が期待できます。
その日の体調や血糖コントロールの状態のほか、糖尿病の合併症の有無などによっては、運動を行ってはいけない場合があります。運動療法を始める前に必ずメディカルチェックを受け、主治医のアドバイスを受けるようにしてください。以下に運動療法における主な注意点をまとめましたので、チェックしてみましょう。
運動を急に始めると怪我をするリスクが高まります。特に普段から運動の習慣がない方は注意が必要です。怪我を防ぐためにも、運動前にきちんとした準備運動を行いましょう。
運動中は定期的に水分を摂取し、脱水症状を防ぐことが重要です。こまめな水分補給を心掛けてください。
運動すると一時的に血圧が上昇します。重度の高血圧や心疾患、腎疾患、重度の眼疾患をお持ちの方は特に注意が必要ですので、運動を開始するのは主治医と相談した後に行ってください。
運動の時間帯を選ぶことが重要です。特に空腹時には低血糖のリスクがあるため、その時間は避けてください。また、インスリンや内服薬を用いている方は、運動中だけでなく、その後にも低血糖が起きる可能性があるため、十分な注意が必要です。
上記の注意点を意識していただくことも大切ですが、糖尿病の患者様の中には、運動療法を避けた方が良い方もいらっしゃいます。運動療法を始める前には必ず医師にご相談の上で始めるようにしましょう。
当院では、患者さんの状態や生活スタイル、スポーツ歴の有無、持病の有無などを考慮して、運動メニューを提案しております。運動療法は継続することで効果が高まりますが、体調や天気が悪いときは中止することも大切です。無理せず楽しく続けることが、運動を長続きさせるポイントですので、一緒に健康を目指していきましょう。