高血圧と腎障害について
高血圧と腎障害について
腎臓は私たちの体のバランスを調整している非常に重要な臓器です。腎臓の中にはたくさんの細かい血管(毛細血管)が集まっており、この血管を通して血液を濾過しています。
しかし高血圧の状態が続くことで腎臓の毛細血管がダメージを受け、次第に腎臓の機能が低下してしまいます。
また腎臓の機能が低下すると体の中に老廃物や余分な水分がたまり、さらに血圧が上がるという悪循環に陥ってしまいます。高血圧と腎臓のトラブルは、お互いに影響を及ぼし合う「負のスパイラル」といえます。
腎臓の働きが著しく低下すると血液を自分で濾過する力がなくなるため、老廃物や水分を体外に排出するために透析という治療が必要になります。透析治療とは体の外で人工的に血液を人工腎臓と呼ばれる装置で濾過する治療法で、腎機能が通常の10~15%以下まで低下した段階で導入されることが一般的です。
高血圧によって腎臓の血管が硬くなり腎臓全体が萎縮してくる病気が腎硬化症です。この腎硬化症が進行すると腎機能が大きく低下し、透析を避けられなくなってしまいます。
現在、日本において透析が必要になる原因として一番多いのは「糖尿病(糖尿病性腎症)」です。しかし近年では糖尿病性腎症を原因とした透析導入が減少を続ける一方で、高血圧が原因となる腎硬化症が理由で透析が必要になるケースが増えており、2019年には糖尿病性腎症に次いで透析導入の第2位の原因となっています。これは日本の高齢化や高血圧患者の増加が大きな理由であり、現在もなお高血圧による腎硬化症を理由とした透析導入は増え続けています。
透析治療が必要になると、日常生活は一変ます。透析治療は身体的・精神的な負担が非常に大きく、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまうのです。透析が必要となるほど腎機能が低下した状態では治療を受けなければ生きていくことが難しくなる為、腎移植を受けないのであれば終生に渡り治療を続けなければなりません。
透析治療が日常生活に及ぼす影響を具体的に挙げると、以下のようなものがあります。
透析治療(血液透析)は1回につき約4-5時間が必要であり、週に3回ほど専門の医療施設に通わなければなりません。そのため仕事や家事に費やせる時間が減り、ご自身だけでなくご家庭でも大きな制限が生じてしまいます。
透析を受けると、食べ物や飲み物に気をつけなければなりません。特に塩分やカリウムが多いもの(果物や乳製品など)は厳格に制限する必要があります。また水分の摂取量も制限されるため、飲み物の量にも注意が必要です。
透析治療は血液を対外で循環、濾過させる治療のため、透析治療の後は疲れやだるさを感じる方が多くいらっしゃいます。治療そのものの時間だけでなく、治療後も休む時間を確保しなければなりません。さらに長期間透析を続けることで、心臓疾患や感染症などの合併症リスクも高まる場合があります。
透析治療を一生続けなければならない、という事実は、ご自身にとって大きな精神的ストレスになり得ます。
このように透析治療が始まると、ご自身をはじめご家族の生活も大きく変化してしまいます。そのため、透析治療が必要になる前に腎臓の機能を守ることがとても大切なのです。
腎臓を守るためには「症状が出てから治療を始める」のではなく、「症状が出る前から予防に取り組む」ことが重要です。腎臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、腎臓の機能が低下しても初期の段階では自覚症状がほとんどありません。気づかないうちに病気が進行してしまうケースが多いのです。
透析を予防するために何よりも重要なことは、糖尿病や高血圧といった腎機能を低下させる原因となる病気の治療を継続する、ということです。特に近年は先ほどご説明した通り、高血圧を原因とした腎硬化症から透析導入に至るケースが多くなってきています。血圧が高いだけで特に何も困っていないし…と放置していると、どんどん腎臓に負担がかかり、腎機能の低下につながってしまいます。
必要に応じて薬を服用して血圧を安定させること、そして塩分を控えた食事や適度な運動をするなど、生活習慣を整えることが大切です。高血圧のお薬を服用している場合、症状が出ていないからといって自己判断で中止せず、医師と相談しながら治療を続けましょう。
また腎臓の状態をチェックするために、定期的な検査を受けることも大切です。血液検査や尿検査を受けることで、腎臓のダメージの有無を早めに確認することができます。
当院では、高血圧や腎臓に関する診療を専門的に行っています。単に血圧が高いからお薬をお出しする、という画一的な治療ではなく、お一人おひとりに合わせた生活習慣の改善も含めた治療計画を立て診療を進めていきます。もちろん、腎臓の機能を確認するための検査も実施可能です。
腎臓を守るためには、早めの対策がとても重要です。透析治療が必要となる前に、少しでも気になることがあればどうぞお気軽に当院までご相談ください。