
脂肪肝
脂肪肝
肝臓の病気というと、一般にB型・C型肝炎ウイルスなどによるウイルス性肝炎や、お酒の飲み過ぎによるアルコール性肝障害などが思い浮かぶ人が多いのではないでしょうか。
近年では、肝炎ウイルスや飲酒に関係なく発症する肝臓病として、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease MASLD:マッスルド/マッスルディー)が増えています。
これは、「脂肪肝」に加え、肥満や、耐糖能異常、高血圧、脂質異常症(高中性脂肪血症、低HDL血症)のいずれかを併発している疾患を指します。
MASLDは、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が関与し、お酒をあまり飲まない人でもアルコール関連肝疾患の人のように肝疾患が進行します。
脂肪肝とは、肝臓の細胞内に中性脂肪が必要以上に溜まってしまった状態です。
肝臓はコレステロールの合成や取り込みの場であり、中性脂肪や遊離脂肪酸を代謝しています。糖質はブドウ糖に分解され小腸で吸収された後、肝臓で中性脂肪に変化します。摂取したエネルギーと消費したエネルギーのバランスがとれなくなった場合、使いきれない脂肪酸やブドウ糖は、中性脂肪として肝臓に蓄えられ脂肪肝となります。
近年では過栄養や肥満が増え、成人の約30%に脂肪肝が認められます。また、大酒家の80%以上に脂肪肝が認められるとの報告もあります。
脂肪肝は原因により分類され、「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝」に分けられます。
飲酒が原因なのか、そうでないかは、お酒に含まれるアルコールの量によって区別されています。
飲酒を原因としない脂肪肝、つまり「非アルコール性」である定義は、飲酒量で男性210g/週(1日あたり30g)未満、女性140g/週(1日あたり20g)未満の飲酒に留まっていることとされています。
ビール(5%) ロング缶1本(500ml)、チューハイ(7%) 缶1本(350ml)、日本酒 1合(180ml)、ワイン グラス2杯弱(200ml)
純アルコール量(g)=アルコール度数/100×お酒の量(ml)×0.8(アルコールの比重)
非アルコール性脂肪肝は、過食、食生活や運動不足など生活習慣の乱れや、内臓肥満、ストレス、昼夜逆転の仕事などが原因で脂肪肝となります。
非アルコール性脂肪肝の発症や悪化には体質(遺伝的な原因)や腸内細菌など、肥満や生活習慣以外の要因も影響することが明らかになってきました。したがって、肥満ではないのに脂肪肝である人も決して少なくはありません。
「わたしは食事で油物はほとんど食べないのにどうして肝臓に脂肪が溜まるの?」とご質問を頂戴することがあります。油物をたくさん食べていなくとも、糖分(砂糖や、果物に含まれる果糖)や炭水化物でも必要以上を摂取すると、それらを構成する糖質は中性脂肪に形を変えて肝細胞の中に蓄えられますので脂肪肝は発症します。
脂肪肝は初期には自覚症状がほとんどないため「沈黙の臓器」とも呼ばれており、肝臓の病気は気づかないうちに進行しています。
脂肪肝の状態を放置すると、だんだんと肝臓の中の環境が悪くなり、肝臓内で炎症がおこります。慢性的な炎症は破壊と修復を繰り返し、肝臓の線維化を引き起こします。
自覚症状としては無症状であるものの、肝硬変や肝臓がんを引き起こすリスクが高い状態となります。
非アルコール性脂肪肝は高血圧、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と深く関連しています。自己判断で放置することはリスクを伴いますので、健康診断で異常を指摘された方は必ず医療機関を受診するようにしてください。
脂肪肝は、初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。しかし、肝硬変へと進行すると、以下のような症状が現れることがあります。
これらの症状が現れる頃には、病気が進行している可能性がありますので、早期の受診が重要です。
脂肪肝やそれに関連する疾患がないかは血液検査と超音波検査などと組み合わせて総合的に判断します。
採血上の肝機能の数値の異常がなくても、脂肪肝の可能性があり、また肝機能の数値が高くても病状が進行していない人もいます。肥満や肥満傾向がある人、高血圧、脂質異常症(悪玉コレステロールや中性脂肪が高い方)、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病やそのリスクがある人は、必ず脂肪肝の有無を、腹部超音波検査(腹部エコー検査)で行いましょう。腹部エコー検査では正常の肝臓と比べて肝臓に脂肪が溜まると肝臓は白く輝いて見えます。
非アルコール性脂肪肝と診断された場合、治療の基本は生活習慣の見直しです。バランスの取れた食事や適度な運動が改善への第一歩です。
脂肪肝の治療は、生活習慣の見直しが基本となります。
肥満がある方は、7%以上の体重減少で脂肪肝による肝炎の状態が改善します。さらに10%以上の減量では、肝臓の線維化が改善すると報告されています。7%以上の減量を目指して食事運動療法を継続することが大切です。
一方で、肥満が無い方や高齢の方は、一律に7~10%の減量を目指すのではなく、個別に目標設定をする必要があります。体重の超過がなくとも、体脂肪率が高い方、筋肉量が少ない方、どちらも正常範囲の方など様々です。生活習慣病などの代謝疾患を合併している場合は、代謝疾患に対しての治療が必要です。
バランスの取れた食事を規則正しく摂ることが重要です。特に、糖分や脂肪分の多い食事、アルコールの過剰摂取を控えることが大切です。一日の総摂取カロリーを適正に保つことが有効であり、極端な炭水化物制限食や脂肪制限食などの効果は分かっていません。
食事療法に関しては、管理栄養士による個人に見合った指導を受けることをお勧めします。
無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動を習慣にすることが推奨されます。運動は、脂肪燃焼を促進し、インスリンの働きを改善する効果も期待できます。肥満を合併した非アルコール性脂肪肝の方に30~60分、週3~4回の有酸素運動を4~12週続けたところ体重減少はなくとも肝臓の状態が改善されたという報告があります。
合併している代謝疾患に対して、治療薬を使用する場合があります。
アルコールが原因となる脂肪肝の場合は、禁酒が最も効果的な治療法です。
江戸川橋駅前内科・甲状腺クリニックは、内科、甲状腺内科、糖尿病内科を専門とするクリニックです。脂肪肝は高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病と密接に関わっており総合的な管理が必要です。女性医師も外来診療を担当していますので、女性の患者さんで女性医師の外来診療を希望される方はお気軽にお問い合わせください。
また、管理栄養士がおりますので、適正カロリーや食事バランスなど、一人一人の生活環境や食事習慣にあわせた栄養相談が可能です。
健康診断で肝機能異常を指摘された方、ご自身の生活習慣が気になる方は、お気軽にご相談ください。当院では腹部エコー検査も行っておりますので、脂肪肝が気になる、診断をしたい方もお気軽にご相談ください。