甲状腺・内分泌
甲状腺・内分泌
内分泌内科では、ホルモンを作る臓器の病気やホルモンの異常をきたす病気を専門的に診療します。内分泌疾患は、すぐにわかる特徴的な症状が現れないことが多く、内分泌疾患の十分な知識がないと症状を聞いただけでは診断することが難しいといえます。
当院では、内分泌臓器(下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎など)の診療に加え、電解質バランスの異常や内分泌の病気を原因とする高血圧、脂質異常症、糖尿病などにも幅広く対応しています。気軽に相談できる“内分泌の病気のかかりつけ医”としてお役に立てましたら幸いです。
内分泌疾患には、頻度の高い病気がたくさんあります。いずれも早期発見が非常に重要な疾患ばかりです。症状が当てはまる方や、気になることがございましたら、何でもお気軽にご相談ください。
甲状腺は首(気管)の正面、のど仏のすぐ下にある重さ15~20g、大きさ4~5cm、蝶々が羽を広げたような形をしている器官です。甲状腺の病気には大きく分けて3種類あります。甲状腺ホルモンが高くなる病気、低くなる病気、出来物ができる病気の3つです。
甲状腺が働きすぎて勝手に甲状腺ホルモンを大量に作り分泌し血液中の甲状腺ホルモン値が高くなる病気です。ホルモンの分泌が過剰になり、代謝が高まることで症状が現れます。甲状腺が全体に腫れてくるバセドウ病が有名です。典型的な症状としては、暑がりになり汗をかきやすくなったり、手が震えたり、体重減少、動悸などが現れます。下痢や気持ちが落ち着かない、怒りっぽくなる、疲れやすいなどの症状が出ることもあります。また、眼球が突出して、周りの人に指摘されたり、目が完全に閉じなくなったりすることもあります。治療は多くの場合、まず、抗甲状腺薬による薬物療法が行われます。
甲状腺は材料であるヨードを甲状腺内に取り込み、甲状腺ホルモンへ合成して蓄え、一定量を分泌しています。この甲状腺が何らかの原因で破壊され、蓄えられたホルモンが血液中へ漏出し血中甲状腺ホルモン値が高くなる病気です。甲状腺ホルモンが過剰のため、バセドウ病と似た症状が認められます。ウイルス感染との関連で甲状腺に一過性に炎症が起こり、組織が破壊されることで生ずるのが亜急性甲状腺炎で、発熱、痛みのある甲状腺の硬結が認められます。これに対し、慢性甲状腺炎を持つ患者さんの自己免疫異常が急激に悪化し組織が破壊されるために起こるのが無痛性甲状腺炎で、通常甲状腺の痛みはありません。どちらもバセドウ病と症状が似ているためきちんと診断できる医師への受診が大切です。
橋本病は慢性甲状腺炎とも呼ばれる甲状腺機能低下症の代表的な病気です。免疫の異常により甲状腺が少しずつ破壊され、血液中の甲状腺ホルモン値が低下してきます。甲状腺ホルモンが低くなり全身の代謝が低下するため、寒がり、体重増加、体温低下、だるさ、便秘、高脂血症などが出現します。また、気分が落ち込んだり、不安感が増したりすることもあります。うつ病や更年期障害、認知症、脂質異常症として治療されていることもあるので、疑わしい症状があれば、甲状腺ホルモン値の検査をお勧めします。
甲状腺の出来物は無症状のことが多いため、頸部のしこりに偶然気づいたり、検診などで指摘されたりする方が増えています。多くは良性であり、腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、のう胞などがあります。悪性腫瘍(甲状腺癌)は、乳頭癌と呼ばれる比較的予後の良いものが全体の80-90%を占めています。甲状腺に出来物がみつかった場合、良性、悪性を判断するために速やかな受診をお勧めします。
下垂体は脳の中心から垂れ下がっている器官であり、体内にある複数の内分泌腺のホルモン分泌調節や尿量を調節するホルモンの分泌などの重要な役割を果たしています。下垂体のホルモン分泌が増加する病気にはクッシング病、先端巨人症、末端肥大症などがあります。逆にホルモン分泌が低下する病気には下垂体機能低下症や中枢性尿崩症があります。下垂体腫瘍の症状としては視力・視野障害があります。また腫瘍自体は良性のものが多く、時間をかけてゆっくり増大する特徴があります。
副甲状腺は解剖学的には上皮小体と呼ばれ、“蝶々の羽”型の甲状腺の左右の羽の上端と下端に多くは1つずつ計4つ存在する器官です。血液中のカルシウム濃度を調節する副甲状腺ホルモン(PTH)を分泌します。副甲状腺の病気の大半は、副甲状腺ホルモンの過剰な分泌によって起こる、副甲状腺機能亢進症です。血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿路結石、骨粗鬆症を生じ、また高カルシウム血症による様々な症状(食欲不振、悪心、嘔吐、便秘、倦怠感、筋力低下、精神症状、のどの渇き、多飲多尿など)を引き起こします。血液中のカルシウム濃度、副甲状腺ホルモン値を計測することで診断できます。
副腎は左右の腎臓の上にそれぞれ1つ計2つあり、1つが重さ4~6g程度の小さな器官ですが、人にとって必要不可欠な副腎ホルモンを作る働きをしています。副腎に腫瘍ができホルモンが過剰に産生されると、太ってきたり、高血圧になったり、糖尿病になるなど様々な症状が起きてきます(クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫)。副腎の働きが悪くなる病気(副腎不全)は生命に関わることがあります。血液検査のほか、ホルモン負荷試験や各種画像診断等で正確に診断することが重要です。
日本高血圧学会では上の血圧である収縮期血圧(心臓が縮んだときの血圧)が140mmHg以上、または下の血圧である拡張期血圧(心臓が広がったときの血圧)が90mmHg以上を高血圧と定義しています。高血圧の状態のまま放置しておくと脳や心臓、腎臓の血管が動脈硬化を起こし、脳卒中や心臓病、腎臓病などの重大な病気を発症する危険性が高まります。日本人の高血圧症の約8~9割が本態性高血圧症(原因をひとつに定めることのできない高血圧)といわれていますが、なかには別の病気があるために血圧が高くなる二次性高血圧症もあり、その多くは腎動脈の病気や内分泌疾患によるものです。
とくに若年者に起こる治療困難な高血圧は、内分泌性高血圧症である可能性が高く、糖尿病を合併することもあります。このような場合、もとにある内分泌の病気を早めに治療することで、高血圧症や糖尿病が治癒することもあります。
脂質異常症とは血液中の「悪玉」と呼ばれるLDLコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が増えたり、「善玉」のHDLコレステロールが減ったりした状態のことをいいます。この状態を放置していると動脈硬化が起こり、ゆっくり進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった動脈硬化性疾患をまねくリスクが高まります。
脂質異常症の発症には、過食、運動不足、肥満、喫煙、過度な飲酒、ストレスなどが関係しているといわれています。「内臓脂肪型肥満」ではLDLコレステロールや中性脂肪が多くなり、HDLコレステロールが少なくなりやすい傾向があります。また、遺伝性の「家族性高コレステロール血症」と呼ばれている疾患もあります。
糖尿病とは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが十分に働かないために血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなる病気です。1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病、その他特定の機序・疾患によるものの4つのタイプに分類されていますが、日本人で圧倒的に多く、生活習慣病の一つとされているのが2型糖尿病です。その発症には、インスリンの分泌不足といった要因に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が関係しています。
糖尿病を発症し進行すると、神経障害、網膜症、腎症、動脈硬化症など様々な合併症を引き起こすことが知られています。糖尿病を予防するため、あるいは進行を遅らせるために生活習慣を見直すことが大切です。
当院では諸検査の結果に基づき、医師、看護師、栄養士が、患者さん一人ひとりのライフスタイルに応じたきめ細かな診療、チーム医療を行っています。
肥満に伴って糖尿病、高血圧症、脂質異常症などを合併し、減量が必要とされる状態が肥満症です。単純性肥満と、内分泌疾患などに伴う二次性肥満があり、単純性肥満でも内臓脂肪の蓄積による内臓肥満は、メタボリックシンドロームの基盤となり、他の生活習慣病や動脈硬化性疾患の危険性が高まるといわれています。重度の肥満症では生活指導とあわせて、薬物療法や超低カロリー食事療法、外科的減量手術などが行われることがあります。
骨粗鬆症は、骨の量と質の低下により骨折しやすくなる病気です。生活習慣病のひとつと考えられており、高齢化と共に増加し、予防や早期診断が注目されています。骨粗鬆症には閉経後の女性に多い「閉経後骨粗鬆症」のほかに、甲状腺や副甲状腺の病気といった内分泌疾患と関係して起こってくるものもあります。気になることがある方は、一度骨密度を測定することをお勧めします。