糖尿病と皮膚トラブルについて
糖尿病と皮膚トラブルについて

「最近、肌がカサカサしてかゆい」
「肌にひび割れができている」
季節の変わり目や年齢のせいにして、このような肌の悩みを見過ごしていませんか?
冬場は肌が乾燥し、かゆみや湿疹などの皮膚トラブルの起こりやすい時期になります。
ただの乾燥でしょ?と侮るなかれ。
乾燥による皮膚トラブルを契機に、重篤な感染症につながることもあります。
今回は、意外と知られていない「糖尿病と皮膚の乾燥」の関係、そして今日からできる対策について、医師の視点から詳しく解説します。
糖尿病は全身の臓器に悪影響を及ぼしますが、皮膚も例外ではありません。
なぜ、血糖値が高いと皮膚トラブルがでやすいのでしょうか?
主な理由は3つあります。
血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が高くなると、腎臓は糖の処理をしきれなくなり、尿として排出されます(浸透圧利尿)。その際、糖と一緒に大量の水分も体外へ出て行ってしまいます(多尿)。
その結果、慢性的な脱水状態になり、皮膚の細胞や組織に含まれる水分量も減少して、カサカサの肌になってしまうのです。
水分を失った皮膚は張りや弾力を失い、柔軟性が低下することでひび割れなどが起こりやすくなります。
AGEs(最終糖化産物)は、持続的な高血糖で糖がたんぱく質や脂質と結合して生じる物質で、血中で増加し組織のいたるところに蓄積します。
AGEsは細胞で慢性炎症を起こしますが、皮膚のAGEsは過去15年の血糖管理状態と関係があると言われています。AGEsの蓄積により、皮膚の角質層や細胞間脂質の生成に影響を及ぼし、皮膚のバリア機能が低下することが示唆されています。
また、高血糖によるAGEsは、血管の内側を傷つけることで血管壁が厚くなり、末梢組織への酸素や栄養供給が低下します。
皮膚細胞への酸素や栄養不足は皮膚のターンオーバー(新しい皮膚細胞の生まれ変わり)を抑制し、皮膚の再生能力を下げるため、できた傷が治りにくくなり、潰瘍へと進行するリスクを高めます。
「乾燥なんて大したことない」と思われるかもしれませんが、糖尿病における皮膚トラブルを放置するのは非常に危険です。
乾燥した肌は、皮膚のバリア機能が壊れやすく、ほこりや衣類の摩擦などの小さな刺激にも反応しやすくなり、かゆみ物質(ヒスタミンなど)などが放出されやすくなります。
すなわち、乾燥があると少しの刺激で「強いかゆみ」を感じやすくなるのです。
ここから、以下のような「負の連鎖」が始まってしまうのです。
健康な人なら数日で治るような小さな傷や靴擦れが、糖尿病の方にとっては、足の壊疽(えそ)などにつながる重大な入り口になりかねません。
「たかが乾燥」と思わず、早期にケアすることが、将来の自分の体を守ることにつながります。
糖尿病の方、あるいはその疑いがある方のスキンケアで最も大切なのは、「観察」と「保湿」です。
足の観察?と思うかもしれませんが、患者さんに「最近いつ足の裏をみましたか?」と伺うと、覚えていない方がほとんどです。
糖尿病の神経障害があると感覚が鈍くなっており、足の小さな怪我に気が付かない方もいますので、お風呂上がりには足の裏、指の間、爪の状態などをこまめに観察する習慣作りをしておきましょう。
お風呂上がりは、肌の水分が蒸発しやすく、入浴前より乾燥することがあります。
入浴後は5分以内を目安に保湿剤を塗りましょう。
市販のものでも構いません。ローション、クリーム、ワセリンなど種類が多くありますので好みや状態、部位にあわせて選択してください。
ローションは水分が多くべたつきにくいものの、保湿力は弱い傾向にあります。クリーム、ワセリンなどは保湿力が高く冬場にはよい選択かと思います。
成分が気になる方は、セラミドやヘパリン類似物質、ワセリンなどの保湿成分を選択するとよいでしょう。
どのようなものがよいかわからない場合は、お気軽にご相談ください。
すり込むのではなく、皮膚の上に膜を作るようなイメージで、優しく広げてください。
熱すぎるお湯での入浴は皮脂を奪い、乾燥を悪化させるため注意しましょう。
40℃以下のぬるめに設定しましょう。
ナイロンタオルなどでゴシゴシ洗うのは厳禁です。石鹸をよく泡立て、手のひらで優しく撫でるように洗ってください。
入浴後も、タオルでゴシゴシ拭くのではなく、軽く抑えるように水分をふき取ってください。
糖尿病のある方の皮膚の乾燥は、重篤な合併症、特に糖尿病による足病変の前兆となることがあります。血糖管理とともに日々のスキンケアを欠かさず行うようにしましょう。
保湿剤による適切な保湿や足のチェックが感染症や潰瘍(かいよう)の予防にもつながります。
より専門的な治療が必要な場合は、皮膚科などの適切な科へのご紹介も可能です。